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ゲームやVRだけじゃない、幅広い産業分野でUnity利用はまだまだ増える=簗瀬洋平氏

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D-Studio|株式会社夢テクノロジーは7月8日と15日、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンのプロダクト・エヴァンジェリストである簗瀬洋平氏を講師に招き、「ゲームアプリ/VRだけじゃない!Unity活用術」と題するセミナーを開催した。簗瀬氏はUnity利用により生じた変化や各分野による利用法の特徴、さらにUnityの将来性や多岐にわたる可能性を「熱く」語った(本記事中の関連ページへのリンクは本記事作成時点のものであり、簗瀬氏が説明の対象とした時期とは異なる場合があります)。

簗瀬氏はゲーム開発者として17年の実績があり、現在はUnityのエヴァンジェリストであると同時に東京大学先端科学技術研究センターの客員研究員でもある。つまり、Unityの実際の使われ方と研究分野を含めてのUnityの可能性を語る上で、最も適した人材の1人と言ってよい。とはいえ、難解な内容を語ったわけではない。具体例を多く紹介し、Unityの可能性を「体感」させてくれるセミナーとなった。

簗瀬氏はまず、かつては例えば自らが手掛けた「ワンダと巨象」のように開発時にOSから作る場合もあったと紹介。

その後に登場したUnityは世界で最も普及しているゲーム開発のための総合開発環境、つまりグラフィックエンジン、モーションエンジンなどが組み込まれているさまざまなシステムの複合体でしかも広告を挿入することも可能で、少人数で開発してそこから利益を得られるようにセットされていると説明。単なるソフトウェアでなくサービスの体系と表現した。

Unityを利用した代表例としてはまず、「ポケモンGO」と「スーパーマリオ ラン」を紹介。「ポケモンGO」の場合にはUnityの機能を完全に使いこなしているわけではないが、同作品が2500億円の利益を上げたことでもわかるように、精密につくることと利益を出すことに直接の関係があるわけではないと指摘。一方、「スーパーマリオ ラン」の場合にはUnityについて「究極の使いこなし」をしていると論じた。

さらにUnityを使って製作され注目されたゲームとして「Monument Valley」、「クロッシーロード」、「メビウス ファイナルファンタジー」などを次々に紹介。

「クロッシーロード」の場合には3人がわずか6週間で開発、しかも広告収入は100億円以上と、省コストで大きな売り上げを出すという開発者としてのひとつの夢を実現させたと紹介。「メビウス ファイナルファンタジー」についてはスマートフォン向けのリアルタイム・ムービーのゲームでも最高峰と評価した。

簗瀬氏は2016年第1四半期の実績でスマートフォン用ゲームのうちUnityを利用して開発された作品は全体の34%であり、しかも利益を上げるゲームが多いという特徴があると紹介。Unityは小学生からプロまで、モバイル用ゲームからコンソール用、PC用まで、さらにゲームだけでなく教育用作品から最先端の研究、映像作品から組み込み作品まで、あらゆるところで使われていると説明した。

モバイルだけでなく、Nintendo Switchの場合にも3月の発売時に20タイトルが日本でリリースされたが、うち5本はUnity利用だったと紹介。しかも、「いっしょにチョキッと スニッパーズ」は任天堂のダウンロード数第1位を獲得したという。さらに同作品はたった2人で開発され、子供から家族全員まで遊べる実によくできたゲームと評価した。

ハイエンド・コンソール向け作品では「INSIDE」を紹介。同作品は小さな会社で個人開発に近い形で制作されたという。簗瀬氏によると、個人開発のような形で作られる作品ではアーティスティックなメッセージが込められている場合が多い。「INSIDE」もそのような作品で、世界中のゲーム開発者にとっての目標であり夢であるゲーム・デベロッパーズ・チョイス・アワードのベスト作品賞を2016年に受賞した。

簗瀬氏によると、PCゲームについては、個性的ゲーム多いが多いと説明。コンストラクション系ゲームの「Besiege」や、「食パンになりきって、トーストになるまで台所で冒険」との異色のストーリーの「I AM BREAD」を紹介した。

「I AM BREAD」の場合、動画サイトへのゲーム実況投稿により、高校生や大学生の間で評判になった。簗瀬氏はPCゲームの場合、個人または個人開発に近い形での制作が多いと指摘。「I AM BREAD」の場合、規模の大きい会社であれば企画書が通ったとは思えず、自分が面白いと思うゲームを自分の考えで世に出し、その作品がヒットすることは、巨額が動く会社買収などの経済効果をもたらすことにつながると指摘した。

簗瀬氏の話はVRゲームに転じた。例に挙げたのはプレステVR(PlayStation VR)だ。2016年10月に発売された同機が17年6月初頭までには全世界で販売台数が100万台を突破するなどで、一時は品切れで買えない事態も出現したと紹介。実際に試したゲームとして「ヘディング工場」を紹介した。

「ヘディング工場」はパートナーである「砲台君」が飛ばしてくるボールをヘディングして「遥か彼方の扉」を目指すゲームだ。簗瀬氏によると、「なんと3D酔いをしなかった」と説明。そして「30分が限界かな」と思っていたVRゲームを、気がついたら3時間も連続して遊んでいた。「VRゲームが定着した」と実感したという。

ゲーム以外にもUnityが利用された例としては、googleの3Dペイントソフトである「Tilt Brush(英語)」やシンガポール国立博物館の常設展示で、120メートルもの壁に複数のプロジェクターで森を映し出し、見学者のスマートフォンのアプリと連動させて3D空間の中で写真を撮れるインタラクティブな機能を持つ「Story of the Forest」などを紹介。

家電への応用例としては、音楽を鳴らすと同時にボディに歌詞が映し出されるスピーカーの「Lyric Speaker」を紹介。さらに「グラフィック関連なら何でもできる」などとまで言われているUnityだが、必ずしもグラフィックがあるものでなくても利用されているとして、大丸創業300周年を記念して制作された、目の前にいる人の動きに反応して本物の花の束を動かすインスタレーションの「flower mirror」を紹介した。

簗瀬氏は続けて、学生による作品を紹介。初めて3Dに挑戦した高校1年生が4カ月をかけて完成した作品が2016年のUnityインターハイで優勝したり、神奈川工科大学のチームが東京ゲームショウに出展した「青森が北海道を倒す」とのコンセプトの「アオモリズム」に45分待ちの行列ができるなど、「プロをうならせる」作品が登場している状況を説明した。

次に、東京大学の廣瀬・谷川・鳴海研究室の大学院生の小川奈美氏が制作した、手を箱の穴に差し込んで鍵盤演奏の動きをさせると、箱の上部に同時進行で自分の手が変形しながら演奏する動画が映写される「Metamorphosis Hand - えくす手 -」に触れた。

「えくす手」を制作した小川氏は東京大学理科2類に入学し、3・4年生の専門課程では同大学文学部心理学に籍を置いた。Unityを扱ったこともなかったが、「えくす手」の制作にかかった期間はわずか2週間だったという。

「えくす手」では、自分の手が実際に変形していくという感覚を得ることができる。心理学で身体所有感と呼ばれる現象のあらわれのひとつという。心理学を学んだ経験に導かれた発想にUnity利用が結びついて、ユニークな作品が登場したと言えるだろう。

VRの学生大会であるIVRC(国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト)は25年の歴史を持ち、上位に入れば世界のVRを引っ張る存在になるとされる権威あるイベントだ。このIVRCでも、Unityを利用した作品が優勝して以来、Unityを利用した作品が増えたという。

簗瀬氏は次に、アニメ制作におけるUnity利用を紹介。まずは、テレビアニメ「魔法使いプリキュア!」のエンディングの映像を挙げた。

簗瀬氏によると、アニメにおけるCGのレンダリングは1コマ当たり数分かかる場合もあるなど時間がかかる。一方、ゲームの場合にはプレーヤーの操作にリアルタイムで反応せねばならないため1コマ1/60-1/30秒でレンダリングを行う。

従来はゲームの画質がアニメより若干落ちたが、ゲームの品質向上によりアニメでも利用できるようになってきたという。ちなみに、「魔法使いプリキュア!」のエンディングは物語の進行に合わせて登場人物が追加されるなど変更が加えられた。実際には大量にエフェクトを盛り込んだなどで1コマ当たり1秒程度でのレンダリングとなったが、速度が速いゲームエンジンを利用したからこそエンディングの変更が実現したという。

また、4月から6月まで放送されたアニメ「正解するカド」の制作でもUnityが利用された。理由は、ストーリーの中核である謎の物体「カド」にフラクタル図形を用いたことだった。フラクタル図形のCG処理は膨大な計算を伴うため、やはりUnityの処理速度が威力を発揮した。

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簗瀬氏はUnity利用のアニメとして制作されたデモ作品の「Adam」を紹介した。1秒の画面をレンダリングする時間が1秒という完全なリアルタイムの作品で、同種の事例では世界最高水準と思われるという。実写作品と見分けのつかないフォトリアルな精緻なCGには、ただ舌を巻くしかない。同作品は世界のさまざまなイベントでCGとしてだけでなく、エンタメ性を評価されショートムービーとしての賞も獲得している。簗瀬氏は、今後はさらに高度な使い方をした作品が出てくると予想した。


Unity利用の産業分野への応用も進んでいる。例えば医療の世界では、CTスキャンで撮った映像を、リアルタイムでCG化する。Unityを利用するのは次の段階で、ヘッドマウントディスプレイを利用して、内臓などの映像をVR化する。CTスキャンの画像による診察は医師によって能力に差が出るが、VR化すればベテラン医師も新人医師も認識を共有することができる。複数の医師が内臓の一部を指さしながら議論することも簡単だ。

医師が自らソフトウェアを開発する例もあるという。自分が最も欲しいものを作れて、費用も安い。さらに、医療用ソフトウェアの製造販売業は法律上の規制を受けることがあるが、医師自らが開発して使うことで、それらの問題が解決するという。

また、竹中工務店は顧客に建物内部・外部の様子をVRで確認してもらうための、空気で膨らませるドームシアターである「visiMax Mobile」を開発した。複数人で利用することで、VRを見ながら意見交換などをすることも可能だ。

また、トヨタ自動車と電通国際情報サービス(ISID)は6月20日、「遠隔地3D車両情報共有システム」を開発したと発表した。2017年度中にトヨタの複数拠点において実証試験を行う計画だ。簗瀬氏は、ショールームにない自動車を顧客とともに検討することが可能と説明。

簗瀬氏は今後についてUnityを高いレベルで使いこなせる人が、これまで以上にさまざまな業界で求められるようになるとの考えを示した。また、学生が研究目的でUnityを使う例も増えていると指摘。その場合、前例のない使い方を自ら編み出している場合も多くレベルも高いので、どんな業界に行っても活躍できることになると述べた。

セミナー受講者の多くは、Unityの存在を知り、自分の将来に生かせる可能性を念頭に、とにかく情報を得たいと考えて会場に足を運んだ人々だ。簗瀬氏もそんな期待に応えようと最新のUnity事情を熱心に語った。

簗瀬氏の語りぶりからは、「Unityは社会にとっても学ぶ人にとっても極めて役に立つ」との強い信念を感じた。簗瀬氏がUnityについて、「人々にグッドニュースを伝える」という本来の意味での「エヴァンジェリスト(福音伝道家)」であることは間違いない。

登壇者

ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社
簗瀬 洋平(やなせ ようへい)
学生時代から日本コンピューターシステムメサイヤ事業部、株式会社キャリアソフト、株式会社コーエーネットなどでキャリアを積み、 ソニー・コンピューター・エンタテインメント、アトラス、株式会社ゲームリパブリック、株式会社サイバーコネクトツーなどでゲームデザイナ/シナリオライタとしてゲーム制作に携わる。
主なプロジェクトは「ラングリッサー」「グローランサー」「ワンダと巨像」「Folks Soul 失われた伝承」など。
代表作は「魔人と失われた王国」
2012年よりスクウェア・エニックスでリサーチャーに転進、現在はユニティ・テクノロジーズジャパンで学術・教育方面を担当しつつ研究者として活動。
2017年 Unlimited Corridorで文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門優秀賞受賞

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