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海外ゲームをローカライズ、ファンを想って細かい作業も入念に=オーイズミ・アミュージオ(旧:インターグロー)・山木実氏&古田由香里氏<開発現場インサイト>

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日本市場向けのローカライズとは、具体的には何をされるのでしょうか。


古田:まずはテキストの和訳です。オリジナルは日本語向けに作られたゲームではないので、日本語を実装した場合バグ、例えば文字化けが出てしまう可能性があります。確認と対応が必要です。

それから文法の違いの関係で、オリジナルと同じタイミングでテキストを出しても、ピンとこない場合があります。そこで改行などを工夫します。テキストの一つひとつに対応する、細かい作業が続きます。それ以外に、CERO(注参照)の審査への対応、各プラットフォームホルダーへの企画申請、ゲームの提出、パッケージ製作も必要となります。
また、日本語への切り替えの他にも、ゲームプレイに支障がないか、全体的なプレイスルーチェック(デバッグ)を行います。


山木:CERO審査は一定の基準に沿って審査が行われます。これは日本国内で販売されるゲームが犯罪などを助長しないよう、ゲーム業界全体で取り組んでいる規制になります。
日本の規制は世界的にも厳しい部類で、この点が海外ゲームを発売する際に問題になる場合があります。


世界的には、バイオレンスで過激なゲームが好まれる傾向にあります。そのため海外のゲームの表現をそのまま日本に持ち込むことができないという問題に直面するのです。
その場合は、表現をマイルドにして自主規制をして日本で発売する必要があります。
しかし、一方で日本のゲームユーザーは、できる限り海外のものと同じ表現でプレイしたいという欲求が大きく、表現の自由と自主規制で二律背反になります。

できる限り、オリジナルと同等の体験を日本のゲームユーザーにお届けするのを目標に、極端な規制は我々も避けたいと努力していますが、この部分はとても難しい問題です。

このように、ただ翻訳するだけでなく世界各国の現地のレギュレーションに合わせることを総じて"ローカライズ"と言います。


どの国のゲームに注目されているのですか。

古田:北米と欧州ですね。弊社ではフランスやイタリアで開発されたゲームが多いです。それにポーランドやドイツなども勢いがあります。インディーゲームと呼ぶのですが、欧州では独立した規模の小さい会社がクオリティの高いゲームを作っている場合が多いのです。

ただ、クオリティが高くても、日本で受け入れられるかどうかは別途判断せねばなりません。そのあたりも、私どもの仕事ということになります。


山木:これは、ゲームづくりに携わろうと考えている若い人に是非、お伝えしておきたいのですが、日本のゲームが世界一という時代はとっくに終わっています。世界の市場のほうが圧倒的に大きく、チャンスがあります。だからこれからのゲーム開発では、海外でも売れるゲームを作るということを、常に頭の中に入れておいていただきたいです。


古田:もちろん、日本のゲームには日本のよいところがたくさんあります。日本のよさを出した上で、海外のゲームのよさも取り入れたゲームを開発していただきたいと思います。



御社の特徴はどこにあるのでしょうか。

古田:弊社は海外のゲームをローカライズして販売する企業としても、規模が大きいわけではありません。しかし逆に小回りが効くという利点があります。小粒であるだけに、良質なゲームを手掛けることができると自負しています。

ありがたいことに熱心なファンの皆さんがいらっしゃって、「このゲームを日本で出してほしい」とのご要望も届きます。

ご要望のあったタイトルは基本的に、すべてプレイしています。PC版を入手したり、海外の開発会社にテスト版を送っていただいているわけです。ご要望のあったタイトルのすべてを日本市場向けの商品にできるわけではありませんが、プレイし社内で検討会を開催しています。

「まとまった数字を出す」という売上目標が高く設定されている大手企業には無理な小規模プロジェクトでも、弊社ならローカライズができるという点は利点です。オーイズミ・アミュージオ(旧:インターグロー)のローカライズはインディーゲームから始まりました。その原点を大切にしながら、大きな規模のゲームの扱いも増やしていきたいと思っています。


山木:弊社の特徴については、自分の得意分野を伸ばしやすい環境がある会社だと思っています。個々の得意なことや挑戦したいことを聞き、それを任してもらえる傾向にあります。


古田:歴代のマネージャーも「仕事を通じてキャリアを伸ばしていってほしい」「自分が何をしたいか、何をできるかを考えてほしい」「いろいろなことに挑戦してほしい」と前向きな姿勢を強調する人ばかりでしたね。



仕事について、どんな点に苦労されてきましたか。

山木:私はプログラマーとしてこの業界に入りました。プログラマー時代には、不具合がでて修復せねばならない場合など、時間的にも大変な目にあったことがあります。やりながら「こんなことは、2度とやりたくないぞ」と思ったほどです。

エンジニアとして自分が直接担当した部分ならば、不具合の原因も比較的すぐに分かるものです。ところが規模の大きなゲームでは多くの人が担当しているので、自分が組んだ場所以外にあるバグなどにも対応せねばならない。解析から始めるので大変です。

ただ、そんな大変さも楽しみとだと気づきました。たしかに「不幸な事態=ストレス」ではあるのですが、ゲームをやっている際に遭遇する「イベント」と同じことです。いくつかの経験を経て、そういう気持ちを持てるようになりました。

そのような心構えを持てるようになってからは、現在担当しているプロデュースやマーケティングの仕事では特に苦しい状況に追い込まれたことがなく、とても楽しく充実感を覚えながら仕事をしています。


エンジニアからマーケティングに職種を変えたきっかけは何だったのしょうか。

山木:ゲームの企画やプログラミングばかりを担当していたり、同じ状況の開発者を見ているうちに、消費者のニーズを追い切れていないように思えたのです。自分が好きなものを追求すると、どんどん独りよがりになっていきます。
製品を作る以上は、他人が好きなものを知る必要がありました。それ以来、私は様々なエンタテイメント、ゲームやアニメ、映画により触れるようになりました。プロジェクトの方向に口を出せる立場になり、いつのまにかニーズを追う今の職種に就くことになったのです。

マーケティングをやるようになって感じるようになったのですが、この業界を目指す人の大半は、ゲームファンでしょう。そういう人の場合、さまざまなゲームを御存じです。しかし、自分の知っているゲームの短所が気になり、自分が持っている尺度を基準に「ここを直せばよいゲームができる」という発想になりがちです。

でも、既存のゲームの悪いところだけを見ているのでは、開発者でなく批評家になってしまいます。

さまざまなゲーム、さらにエンタメ作品全般のよい部分を見る力が必要です。ゲームやエンタメが世に出れば、ファンがつきます。たとえ自分は好きになれなくても、そのファンの人々がどの部分に楽しみを感じているのか察知する必要があります。これがとても重要なのです。


自分の趣味の延長ではだめだということですね。

山木:人の好みはそれぞれです。自分が好きだからこのゲームは売れるという発想ではだめなのです。逆に、自分の好みとしては「ちょっとなあ」と思えても売れているゲームはあるはずです。

自分が好きな部分や嫌いな部分だけを見ていたのではだめです。大切なのは好奇心と言えるかもしれない。広い好奇心があれば、ニーズが見えてくると思います。

例えばバイクのゲームです。日本のゲームには見当たりませんでした。でも、好きだという人が社内にいました。バイクファンやモータースポーツのファンです。そこで「では、権利を買おう。ローカライズしよう」ということになり、「こういう人をターゲットに広告をしよう」と、売るための方法を工夫したのです。

この感覚は作り手にも当てはまります。作る側の立場の場合は、自分の感覚を重視してしまいます。でも、単なるゲームファンでなく、業界で生きていこうと思ったら、ゲームを「作品」とだけ考えているのではだめです。

ゲームは製作者の「作品」でありながら「商品」の側面もあるのです。そのあたりのバランスが必要になります。「製品」を目指さねばその先はないと考えています。

左:山木 実(やまき みのる)氏、右:古田 由香里(ふるた ゆかり)氏

古田様は、どういういきさつで業界入りされたのですか。

古田:私は学生時代、児童文学を専攻して、翻訳者を目指していました。英語を使う仕事ということで、オーイズミ・アミュージオ(旧:インターグロー)に入社したわけです。

ただ、一時期、システムエンジニアとして仕事をしたことがあります。大学卒業後に就職した会社でプログラム研修を受けたのですが、1年半ほど仕事をしました。

エンジニアとしては「ポンコツ」だったと思いますが、開発がどんなことか分かったことは収穫でした。だから、ゲームの会社にすんなりと溶け込めたのかもしれません。

翻訳者は職人気質です。自分の訳に強いこだわりをお持ちです。ゲーム翻訳でももちろんこだわりが必要なのは同じですが、ゲームユーザーに分かりやすいようにする工夫が必要です。

それに、言葉とは生き物でもありますから、今の日本人に合わせた表現や表示にせねばなりません。他社がローカライズしたゲームを見て、勉強になることも多いです。学ばねばならないことは、まだまだあります。

日本語化が難しい例としては、ゲーム中に出てくるジョークがあります。開発された国の文化の背景があって初めて笑える場合があるからです。どうやって日本人向けにしようか、あるいは海外ゲームであることを前提に楽しんでいるお客様もいるので、日本人には少々難しくても原文に近い形で残すべきか。ゲームによってバランスを見て考えねばなりません。

それ以外に、困難に直面したことはありましたか。

古田:この仕事を始めた当初には、日本のゲームファンと海外のファンのゲームに対する認識の違いに戸惑うこともありました。

日本のファンは実に細かい。日本のファンが「致命的な問題」と感じることでも、海外の開発会社にとって「なんで、その程度のことが問題になるの? 欧米では問題なく受け入れられているのに」となってしまうことがあるのです。

弊社の場合、ローカライズの具体的作業は基本的に、海外でそのゲームを開発した会社にお願いしています。日本人ファンに「100%」と認めていただけるゲームを出したいと常に考えていますから、開発会社に手直しをしていただくのに、ずいぶん苦労したこともあります。どんなにこだわりを持って伝えても、版元や開発にNOと言われてしまえば限界があります。

ただ現在は、日本のファンの気質を事前に話してご理解いただくようにしており、開発会社にご納得いただくために苦労することはずいぶん減りました。経験を通じて学習したと言えるかもしれません。


山木:ローカライズと言っても、さまざまなやり方があります。会社によっても規模によっても選択肢が出てきます。私どもがお話していることも、弊社の経験にもとづく紹介とご理解ください。


古田:それから、弊社ではおおむね1、2カ月に1本のペースでゲームをリリースしており、4、5タイトルを同時進行する状態で作業を進めています。海外の会社とやり取りするので時差の問題もあり、この仕事を始めた当初には体調を崩してしまったこともありました。

長くしっかりと仕事を続けていくには自分自身のタスク管理が必要と痛感しました。

仕事を通じて気づいたことはありますか。

古田:海外のゲーム会社とのおつきあいを通じて強く感じるようになったのですが、ゲームが大好きであると同時に、ゲーム以外にも好きなことをお持ちの方が多いのですね。

バイクが好きだったり、楽器が好きで休日にはコンサートをやっていたりする人がいらっしゃいます。「Ride 2」というバイクのゲームを開発したイタリアのマイルストーンという会社の方ですが、「週末にツーリングに行きました」「新しいバイクを買いました」なんて写真をバンバン送ってくることがあります。この人は本当にバイクが好きなんだということが、よく分かります。

そういう、ゲーム以外にも自分の好きな世界を持って楽しんでいる人なら、結果的に楽しいゲームを作れるかもしれない。小説を読んだり、旅行をしたり、自分の世界を持っていた方がよいと思います。


山木:とは言っても、ゲームが好きな人には若い人が多く、あまりお金を持っていないことが多いでしょう。若いうちにいろいろなエンタメに触れるのは、難しいかもしれません。私も学生時代はそうでした。

でも、社会人になってゲーム業界やエンタメ業界転職を考えている人ならば、ある程度の余裕があるかもしれません。そんな人ならば、いろいろなエンタメに触れておくこともできるかなと思います。

ゲーム業界を志すなら最低限、流行の映画やアニメは見ておいてほしいですね。ゲームの仕事に重なる部分も大きいですから。
そういうゲーム以外の分野にもアンテナを広げようという姿勢や好奇心が、最終的にアイデアになります。自分が好きか嫌いかは置いておいて、なぜそのコンテンツが人気なのかを探るには、そのコンテンツに触れる時間が必要だと気づきました。


注:CERO(セロ)
Computer Entertainment Rating Organization(コンピュータエンターテインメントレーティング機構)家庭用ゲームソフトと一部のパソコンゲームを対象とする表現の倫理規定の策定及び審査を行うため、年齢別レーティング制度を運用・実施する機関として2002年に発足。03年には東京都より特定非営利活動法人(NPO法人)として認証された。

取材・構成:D-Studioマガジン

株式会社オーイズミ・アミュージオ(旧:株式会社インターグロー)

山木 実(やまき みのる)
経歴:ゲーム系専門学校 プログラミングコース卒業後ゲームクライアントプログラマ、ゲームサーバープログラマ、システムエンジニア、ディレクターなどを経て2011年10月インターグロー入社
業務内容:企画、広報、インフラ、ユーザーサポート

    マイブームコンテンツ
  • ファイアーエムブレム Echoes
  • スナックワールド トレジャラーズ
  • Vagante
  • Die Legenden von Andor
  • Game of Thrones

古田 由香里(ふるた ゆかり)
経歴:システムエンジニア、営業事務などを経て2014年7月インターグロー入社
好きなゲーム:零シリーズ、SIRENなどのホラーゲーム
業務内容:「シャーロック・ホームズ-悪魔の娘-」、「Ride 2」をはじめインターグローのローカリゼーション・プロデューサーとして海外ゲームのローカライズ業務全般を担当。
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